いざというときのQ&A99のA

-大震災に備えて-

A1 何よりも安心感を持たせることが第一である。肌のふれあいが有効なコミュニケーションとなることは多くの専門家が指摘することである。声をかけながら側に近寄り、体を抱きかかえるとか、手を握るなど身体的な接触を保ちながら「先生がいるから大丈夫」と繰り返して言う。恐怖がしずまり少し落ち着いてきたら現実をゆっくり話す。

※学校が再開した後、余震が何度か起こったことがあったが、「落ち着いて、大丈夫です」という放送で随分気持ちを落ち着けた子どもたちがいた。

A2 児童生徒を窓ガラスより遠ざけ、教室内で安全を確保するような大きな声で指示する。その後、教室のドアや窓ガラスを打ち壊し、児童生徒の救出に当たる。防火扉が閉まった場合は、扉を手動で開けるまでは児童生徒を励まし続け、少しでも閉じ込められることへの不安感を取り去る。被害が大きく、職員が近づけない場合は、消防署員等の出動を要請する。また、負傷していることも考えられるので、養護教諭を中心にした救護班の準備や学校医等への連絡も場合によっては必要である。

A3 負傷者が出た場合は、止血等の応急処置を施す。軽傷の場合は他の児童生徒と一緒に避難させるが、重傷の場合は教師が付き添って救護班の救助を待つ。児童生徒の避難後、応急処置を施し、医療機関に委ねる者とそうでない者を決めて措置する。その際、個々の負傷の様子や応急処置について記録しておく。この対応については、医療機関との連携が不可欠であり、関係機関と日頃から救急医療体制について協議しておく必要がある。

A4 ハンドマイク、メガホン、笛、懐中電灯などが考えられるが、何よりもその場に居合わせた教師の指示・誘導が被害の程度を左右する。そのため放送機器や用具が使えない場合を想定した避難(防災)訓練を実施し、臨機応変に対応して適切な指示・誘導ができるよう、また児童生徒が安全に避難できるよう訓練を積み重ねておくことが大切である。本部の指示としては、管理職の指示に従って、職員室にいる教師が中心となってハンドマイクを使って連絡を流す。日頃から災害が起こったときはまず安全確保に努め、次の指示があるまでその場に待機しているという習慣を身に付けておく。

A5 活動できる教職員により、児童生徒の安全確保や応急処置を可能な範囲で行うとともに、教育委員会(災害対策本部)に連絡を取りながら、市町職員、消防署、地域の消防団等に救援を要請する。児童生徒が教室にいる場合は、児童生徒のリーダーの指示に従わせ、慌てずに危険を避けて避難させる。日頃からそうした状況を設定した避難訓練をしておく。教室にいない場合は、休憩時間中の避難訓練で自主避難の訓練をしておけば有効である。また、平素からどのような場合にも対応できるよう、二重、三重の代行者を決めておくなど、実際の場面でいかに組織的に動けるか、いかに適切に行動できるか、いかに家庭や地域社会と連携がとれるかがポイントとなる。

A6 校長や教頭等に至急連絡するとともに、原則二人一組となって、施設の安全を確認しながら。校舎内を再度巡回し、不明児童生徒の発見に努める。他府県の報告にも見られるように、児童生徒が地震の恐怖から自宅に戻っていることも考えられるので、家庭への連絡も必ず行う。

A7 家庭、保護者の「緊急時の連絡方法」に基づく電話連絡を基本とする。電話が不通の場合は、家庭訪問や避難所訪問を行い、可能な限り足で情報・連絡を取り合うことが大切である。また、必要に応じて、メディアの協力を得ることも有効である。

※先の大震災では、電話は不通、停電の中で携帯のラジオだけが唯一の情報収集源であった。被害のひどかった地域の学校では、児童生徒の安否確認に1週間を要した所も多かった。

A8 大きな余震の危険性が遠のき、火災等の二次災害の恐れもなく、通学路及びその周辺の建物等の損壊・危険状況、家庭の被害状況などの情報が安全と確認された後、集団下校における上級生の危険予知能力や指導力などを考え、保護者に引き取りを依頼するか、立ち番を依頼するか、または学校に残留させるか判断する。また、地区担当教師が付き添うなり、ポイントに立ち番するなどの配慮が必要である。

A9 平素から引き渡し訓練方法について保護者会等で話し合い、学級担任がいない場合でも、児童生徒の人員の掌握と保護者への引き渡しが確実にできるように体制を整え、日頃から訓練しておくことが大切である。「引き渡しカード」には自宅の電話・父母等の勤務先住所・電話・依頼する引き取り人の氏名を前もって記入させておき、実際に引き渡す場合は引き渡したことの確認書に、いつ・どこで・だれを・だれが・だれに引き渡したかを記入する。

※修学旅行からの帰路中に震災が起きたため、保護者との連絡がとれなかった者については、学校で待機させ、安否確認ができ次第引き渡した。

A10 児童生徒が引き取られるまで安全な場所に集め、その場から離れないように座らせ落ち着かせる。必ず教師が一人は側に付き、児童生徒に安心感を与える。落ち着いた段階で順次自宅に送り届けるが、自宅に家族が不在の場合は、貼り紙をしておき、保護者が引き取りにくるまで学校で預かる。子どもに不安感を抱かせないように配慮することが大切である。電話が復旧すれば、勤務先または緊急連絡先に電話する。

A11 突発的な災害に際し、一人一人の行動特性を予測しておくことや、担任の手を離れている時の居場所を把握しておくことが大切である。障害の種類や程度により違いがあるが、担任等の人手だけで安全に避難することは難しい場合も多い。全校組織の中で、具体的に体制を整えていくことが大切である。おぶいひも・キャスター付きの箱・リヤカー等は障害の重い児童生徒の避難用具として整えておくことも必要である。大きなテーブル・ふとん等も防災に必要である。災害時においては、大きな声で勇気づけ、できるだけ手を引いたり抱いたりして、障害児を一緒に座らせたり、小さい輪になって手をつなぎ、単独で動いたり飛び出したりしないように配慮する。この他、特に持病等がある児童生徒の救急カードの携帯などについても関係機関に働きかけて、きめ細やかな配慮を検討しておく必要がある。

A12 教職員が放送またはハンドマイクで安心させるための声かけを行うとともに、児童生徒の安全を確保する。次に避難についての指示(建物等からなるべく遠ざける)を出し、誘導に従って避難させる。その際、可能な限り一人で行動させないで、集団で動くように指示する。校舎内児童生徒や保護者がいる場合は、揺れがおさまった時点で、担当者が校舎内を見回り、必要な指示を与える。また、帰宅に当たっては、手順に従って児童生徒を保護者に引き渡す。

A13 停電で真っ暗になり恐怖感からパニック状態になることが予想されるので、暗幕を開けるなど、まず明かりを取ることを優先する。また、落下物があることを予想して頭を覆う。ステージ上で演奏している児童生徒は、頭を覆うと同時に安全な場所に移動させる。揺れがおさまった段階で非常口・非常階段から避難順序に従って安全な場所に避難させ、落ち着かせる。

A14 日頃から校区を地区別に区切って、地区担当を決めておくことが大切である。地区別の児童生徒名簿を手に、担当区を歩いて、子どもたちの消息をさぐる。直接児童生徒本人に会えない場合もあるが、保護者・近所の人から聞き取りをして状況を把握する。調査結果を持ち帰り、全体状況を整理する。未確認児童生徒がいる場合、地区別未確認児童生徒名簿を作成するとともに、特に都市部では丁目ごとに未確認の児童生徒名を記したビラを作り、「ご存じ方は学校へ連絡してください」と記して辻ごとや避難所に掲示する。電話が通じると、保護者同士の連絡が可能になり、またビラを見た地域の住民から多数の情報を得ることができる。どうしても分からない場合は、マスコミ・報道機関を通じて学校に連絡を入れるように呼びかける。

A15 安否未確認の児童生徒についての情報収集の場合と同様に転居先不明の児童生徒を記したビラと「ご存じの方は学校へ連絡してください。」と記したビラを校区の目印になるような場所に掲示したり、地域の人々に情報提供を依頼する。また、保護者の勤務先、親戚などからも情報を得たり警察への依頼等も考えられる。

A16 通学路と校舎内での安全面のメドがたち、教職員が危険で注意を要する場所の確認と当番配置の予定がたてられたら、早めに登校の呼びかけをする。何日・何時に・何を持って登校するかを分かりやすいポスターを学校周辺、各地区の目立つ所に貼る。電話が通じている場合は、電話連絡網で連絡する。避難所訪問や疎開児童生徒への連絡も実施する。場合によっては、マスコミ・報道機関を通じて繰り返し報道してもらう。校区外(特に遠方)等に避難した時は、情報が得にくい場合があるので、日常の防災教育の中で、遠方に避難した時は、本人から学校、又は友だちと連絡を密にするよう徹底しておくことが大切である。

※電話・家庭訪問で連絡が取れなかったが貼り紙を見て登校した生徒もいた。登校日、約半数が登校し生徒4名の落命が判明した。

A17連絡方法をあらかじめ確認しておく。行き先の施設等への電話、ファックスが一般的であるが、バス会社の業務用無線、官公庁の行政無線による方法も検討しておくとよい。施設内で活動している時間帯であれば、まず電話で連絡をとる。また、校外学習先から定期的に学校へ連絡を入れることを、日頃から習慣化しておくことが大切である。校外学習を実施する施設、最寄りの警察署、消防署、病院等に事前に実施要項を送付し、緊急時の連絡を依頼しておくことも学習先で災害にあった場合に有効である。

A18 校外に出る場合は、原則として児童生徒名簿(必要事項が記入してあるもの)、連絡先電話番号一覧等を持って行く。また、児童生徒には日頃から避難方法や教師の指示に従って集団で行動できるよう事前指導しておく。例えば、地下鉄・地下街にいて遭遇した場合では、ゆれがおさまり次第すみやかに地上に出るようにする。教師は児童生徒にリュックなどで頭をカバーさせ、落下物を防ぐ場所にすばやく避難させ、すみやかに点呼、人員の確認、けがの有無などを調べる。児童生徒を励ましながら、けがをした者の応急手当をする。現地官公庁と連絡をとり、情報をとり対応および状況を報告する。

A19 各居住地域ごとに班を編成し、集合場所を特定しておく。災害時にはその場所へ集合し、安否確認及びその他の情報を収集するのも一つの方法である。また、絶えず通話中で学校へ連絡が取れない状況になった場合は、学校に近い職員宅、又は保護者会の役員宅に電話し、学校への連絡を依頼する。(自宅電話より公衆電話・携帯電話の方がかかりやすい場合もある)自宅も学校も被害が大きい地域にある場合は、遠方(被害の少ない地域)の教職員に電話し学校への連絡を依頼する。

※この度の震災では、自らの家屋が倒壊したり、電話の不通により、震災後数日間、連絡の取れなかった教職員もいた。

A20 平素から緊急時の連絡方法について周知徹底しておく。災害時には電話連絡を基本とする。不通の時は、教職員の救援・支援活動などに支障のない範囲で自宅を訪問し確認する。不在の場合は置き手紙等をする。新聞・テレビの安否ニュースに注意しながら2日以上連絡が取れない時は、自転車や単車で行ける範囲で安否確認の班を組織する。

※自宅を訪問すると家屋が全壊して不在だったが、避難先が記されていた。市内のある学校では、直接出勤できた教員は2割程度であった。4割は交通マヒで出勤不可能、後の4割は自宅待機であった。対策本部を設置し、避難所の運営がスムーズに行えたのは2週間程経ってからであった。

A21 日常において緊急連絡網の他に、学校に10分以内で出勤できる教職員を中心に夜間休日緊急連絡網を作成し、学校に一番近い教職員を連絡の責任者として位置づけておく。管理職による電話の指示で、組織が動くようにしておく。

※震災当日の勤務先との連絡方法(管理職対象)

 とりあえず電話連絡     58人

 出勤(電話不通のためも含む)99人

[県立高等学校長協会アンケート調査より]

A22 万一災害が起こった場合は、学校の防災計画の中で、各教職員の家族の安全を確認する班を明確にしておくことも大切である。電話での安否確認が可能であれば、知人宅等に電話し確かめる。確認できない場合は確認のため帰宅させるのもやむを得ない。

[ある教師の言葉]「今回の震災で自宅が半壊したが、学校が心配で自転車で家を出た。途中道路が寸断し、また家屋が倒壊し、あちこちで救急・救命活動が行われていたがそれを横目に職場(学校)に着いた。学校は避難者であふれていたが、特に自分のする仕事がなかった。今でもそのときの行為がよかったのか、途中で救助活動をしていれば、一人でも救助できたかもと後悔している。」

A23 通勤途上で地震が発生すれば、まず自分の身を危険から守らなければならない。道路状況、付近の構造物等状況はいろいろ異なるが、基本的には広い空間が確保されている場所(広場、公園等)、落下物の危険がない場合に身を置き危険を回避する。次に職場に直行し職場の業務(建物等の安全確認や児童生徒の安否確認)に従事するか、一旦家庭に帰り、家の被害状況・家族の安全を確認し、確認ができてから職場にでかけるか、職場までの途中の場所で救命・救急活動に従事するかは一概に言えない。可能であれば学校に電話連絡し、自分の現在の様子を伝え、学校の様子を聞く。学校に電話が通じない場合は、保護者会の役員宅に電話し、学校への伝言を依頼する。徒歩で通勤も不可能なら自宅へ引き返す。学校との間で連絡がとれるよう努力し、状況により自転車やバイクで再出勤する。

※被災地の県立学校教職員の震災直後の出勤率

 17日(39%)18日(46%)19日(55%)

A24 直ちに校内の火気を点検確認し、火気厳禁を徹底させる。学校へのガス引き込み管の元栓を閉める。(ガス元栓の場所を全ての教職員が知っておく必要がある。)ガス会社・消防署に状況を連絡し、復旧を依頼する。校地周辺の被害にも注意し、危険の回避に努める。また、避難者がある場合はその代表者に状況を伝え、協力を依頼する。

※ガス管が破損し、地割れのため何日かガスくさい日々が続いていたが、拡散されてきにならなくなっていった。ガスの元栓をとめるどころでないのが現実であったが、二次災害を防ぐためにも一人一人が自分のできる範囲の中で出火の要因を極力断つことが大切である。

A25 学校備品の安全設置、とりわけ薬品庫については次の点に十分留意する必要がある。

① 古い薬品を整理しラベルの貼り直しをする。

② 栓を完全にして転倒しても漏れないようにする。

③ 薬品庫自体が仮に転倒しても開かないようにしておく。運悪く散乱して危険な場合、児童生徒の入室を禁じ速やかに整理する。

④ 常に学校薬剤師とも連絡を取っておく。

A26 建物の危険度判定は、専門家に任せなければならないが、壁の亀裂や天井からの落下物等によって建物への立ち入り禁止の判断・指示は管理者として校長が判断する。また、複数の眼で建物外部の亀裂等の有無、次に内部の損壊状態を確認する。主に注意すべき箇所は建物の傾き、柱の座屈、壁の倒壊、×字の亀裂、建具、天井板、蛍光灯などの落下物窓やガラスの破損状況などである。余震で倒壊へと進行するかどうかについて、亀裂箇所にガラス板片を貼っておくと、その進行度がわかる。

※実際には避難住民が多数にのぼった学校では、使用できる教室が十分でなく、保健室、管理員室、相談室など管理棟も開放せざるを得なかった。本当に危険度のない場所は、数少なかった。

A27 予め決めておいた教育委員会の窓口へ報告する。報告内容によって報告先が異なる。学校現場から教育委員会のある一カ所に報告することですむような対応が求められる。被害が大きい場合は、教育事務所等県の出先機関による聞き取り調査によるものも考えられる。

A28 各市郡町教育委員会でそれぞれ予めきめている部署に報告する。大災害の場合は各市町の災害対策本部が被害状況等も把握し、対応を図るようになるので、直接電気会社やガス会社・水道局に連絡をとらない方がよい。

A29 停電時を想定すると携帯ラジオ等を利用し情報収集するのが最も確実である。最近では車載テレビも普及しているため、それらを利用することも考えられる。

※避難所を開設し、負傷者や遺体の搬送のため、自家用車を利用し、情報収集のためラジオを聞いていたが、被害の全体状況を得るのに不十分とはいえ、車載テレビはずいぶん助かった。

A30 震災の後、はっきりした状況がつかめない段階でデマは横行しやすく、平時であれば信じられないような内容も、不安な心理状態の中で簡単に惑わされてしまうことが起こる。特に余震に関することが多いが、今の科学では日時までの予測はできない。避難所では伝達事項の内容を再確認できる貼り紙が効果的である。

※震災時に「満月の日に余震がある」という情報が流れた。しかし、地震が発生したことはなかった。

※「八戸」「水戸」「神戸」等、地名に「戸」がつく所で次は「江戸」とか「松戸」とか言われた。

A31 災害対策本部、警察署、消防署などから情報を収集する。1枚の校区地図に情報を記入していく。保護者や地域からも情報が入ってくるが、出勤している教職員を地区別に割り当て、現地を確認して確かなものにする。家屋倒壊、道路の亀裂・陥没、橋の破損など特に通学に危険な箇所はよく分かるように記入する。得た情報は、避難住民も含めて皆で共有していくことが大切である。

A32 車載テレビ、携帯ラジオ、新聞などの報道機関から情報を得る。また、最寄り駅、停留所、港や災害対策本部等の掲示板によって状況を把握する。行政機関が無線等で情報をつかんでいる場合もあるので、バイク、自転車等で近くの行政機関へ走ることも試してみてよい。

A33 情報収集は、各報道機関の他に、保健所のポスター、保健だよりなどによる。収集先としては、公民館、自治会集会場、保健・医療・福祉等の関係機関がある。なお、医療機関が被災したり、対応能力を越えたり、被災地が医療機関から遠い場合には、市町によっては、現地に救護所が設置されていることも多いので、市役所や町役場に問い合わせる。

A34 通常は市役所や町役場内に置かれる。他に、災害の状況に応じて、市民会館や町民センター、市町防災センター等の公共施設や、被災地の中心的な小学校や中学校のグラウンドに救護対策本部が設置される場合もある。本部への連絡方法としては電話の一般回線・専用回線、防災無線などが考えられるが、遠ければ単車や自転車などで足を運ぶのが最もよい。

A35 窓口を一本化(校長又は教頭)しておくことが大切であるが、事実や全員が知っておくべき情報は、避難所本部の掲示物で知らせるようにしておく必要がある。対応に当たっては物理的・時間的な調整に手間取る場合も考えられる。また、正確を期すため点検も必要である。一問一答式に手当たり次第という方法でなく時間を決め、資料を整理して双方の都合のよい時間に対応する。

A36 まず、相手がどんな立場の人物かを把握する。内容を聞く時は丁重に接し、非があれば可能な限り改める旨の返事をする。直接学校と関係のない場合は、内容によっては相手先を紹介する。災害時の苦情等は原則として市町災害対策本部が担当する。いずれにしても、災害時における苦情なので、できるだけ親切に扱うことが大切である。

A37 ①保護者とどんな関係にあたるか?②保護者が直接でられない理由は?③児童生徒本人が照会者を知っているか?等を確認する。事前にカードに登録してある人であれば、受話器に取りつぐなり会わせるなりする。照会者が知らない人であれば、原則として本人を出さない。学校にとって児童生徒を引き渡せる人は、あくまでも保護者であり、単なる照会の場合でもしらない人に対して応じるべきではない。

A38 避難者名簿(入所日時・氏名・性別・年齢・住所・住宅破損状況・退所日時・移転先)の一覧表を作成し、貼り出し、誰でも対応できるようにしておく。電話での避難者の呼び出しは断る。しかし、あくまで丁寧に対応することが大切である。避難していない場合は、住所から判断して、避難している可能性のある避難所を知らせる。

※避難者の対応で追われている中、電話や訪問による問い合わせが殺到したが、貼り紙によりかなり助かった学校も多かった。

※震災直後は停電でコンピューターが使えず、名簿作成が困難であった。手書きで避難者名簿を書き出し掲示した。

A39 避難者に知らせる必要があるかどうかの判断をしてから受ける。(公共機関からのものは問題ないが、特定の宗教や政治団体等のものについては、内容を吟味して慎重に対処する。避難者や地域の人々にとって利害関係が生じないかも判断する。)避難者用の掲示板に整理して掲示するが、全員に必要なものは併せて放送する。適切な時期にはずしてファイルしておく。

※「私は字が読めないので、仮設のことなどのお知らせは放送してください」という中国の人の言葉を大切にしたい。

A40 避難所運営にも、避難住民たちの生活にも、ボランティア支援は大きな力となる。ボランティアは大きく2通りに区別される。1つは、長期滞在型で、避難所の運営に携わるもの。もう1つは、短期型で、炊き出しや医療相談など数時間から1~2日間のもの。構成メンバーも学生、各種団体、など多方面にわたる。先の震災ではより多くの人手を必要とした反面、ボランティアへの対応で苦慮することもあった。窓口を避難住民に対するのもと子どもたちに対するものに分けることも考えられる。近隣の避難所と連絡を密にし、ボランティアが1カ所に片寄らないようネットワーク化を進めることが大切である。

A41 団体か個人か確かめながら名前を記入してもらい、「何ができるか」を把握しておく。しいほしいことを簡潔に伝え、場所、道具、注意事項を伝える。ボランティアの腕章をわかりやすいところにつけてもらい、避難者に紹介する。

※大人のボランティアが高校生のボランティアを指導し、はげましながら種々の仕事をこなしてくれ、大いに助かった学校があった。

※一般ボランティアの活動者数(阪神・淡路大震災)

1月18日~2月17日   62万人

2月18日~3月16日   38万人

3月17日~4月16日   17万人

4月17日~5月18日   13万人

A42 非常時における体制を考える場合、どこが欠けても、その代替えができるような組織づくりが必要である。教職員間の連絡は取れるが来られない場合と、連絡そのものが取れない場合の2通り考えられるが、いずれにしても緊急時に対応できる柔軟な組織づくりと、それが十分機能するための平素の訓練の積み重ねが大切である。

※ある校長が、倒壊家屋の下敷きになって亡くなった。死亡の確認が10時頃になったので、学校では教頭を中心に対応したが、校長の生死が分からないのでものごとの決定が遅れた。

※交通途絶等による職専免人数

1月17日(火)16人 1月18日(水)8人 1月19日(木)4人

1月20日(金) 4人 1月23日(月)1人 1月24日(火)0人

(被災地の県立学校管理職60人対象)

A43 NTTの基本的な考え方としては、各市町の指定する避難所には、臨時電話、公衆電話を設置するということになっている。このため、避難所に指定されている学校において、あらかじめ臨時電話、公衆電話を設置する場所を決めておき、NTTからその旨の連絡があれば、「設置場所はここです」とすぐ対応できるようにしておく。

※設置における対応の苦労は知らないが、避難所にある電話を使用すれば無料ということが広まり、避難者のみならず、外部からも多くの人が利用したという。マナーという点で、使用方法等の貼り紙をすることが望ましい。

A44 必要なものであるかどうかを確かめて、丁重に受け取るか断りをするのか判断する。氏名、住所を聞いて、寄贈品名と数を記録しておく。

※近くの酒造会社からポリタンク入りの水がどんどん運びこまれて、大変助かった。四国から若い夫婦がおしめとミルクをもって大阪港から自転車で届けてくれたことにも感激した。

A45 避難者間や教職員との間のトラブル防止のため、原則として絶対数が足りるまで配分せず対策本部に支給を要請する。どうしても緊急を要する場合は、避難者に状況を理解してもらい、高齢者や子どもなど弱者より配分する。

※きめ細かな情報交換や避難住民のリーダーとの連携、被災者の心理状態などの把握など、人間的なつながりを深めることは最も重要であり、互いの信頼関係の確立に努めることが、円滑に運ぶもとでもあったようだ。

A46 避難住民数(障害者、高齢者等への配慮)、テントの不足数、増設場所、児童生徒や学校運営への影響などを災害対策本部に連絡し、資材の調達や避難住民の別施設への移動等の判断材料にしてもらう。

A47 避難所の自治組織や市町村職員が中心となってその処理にあたり、不足追加数を災害対策本部に要請する。その間既設トイレを使用することになるが、下水道に放流できるかどうかなど、事前に被害の有無、許容能力を確認しておく。

A48 他の施設に移動してもらうことになるが、緊急時の対応には困難を伴うことが多く、事前に避難所の候補地をリストアップし、その場所の安全性を確認、整備しておくことが大切である。避難所に指定された場合は、耐震性等二次災害防止を図るとともに、収容人数を明確にし、施設(給水施設、空調、トイレ、自炊場、洗濯場、物干し場、場内外排水、保健室、集会場、ゴミ集積場、動物飼育場など)の状況を常に把握しておく。

A49 災害対策本部から保健所に報告し、その指示を受ける。被災者に対して、炊き出し、弁当が支給される場合が多く、夏季は特に注意が必要である。また、備蓄飲料水や井戸水、救援水の使用、自炊場の設営に当たっても、事前に保健所等の指導を受けるなど食中毒の防止に努める。

A50 食中毒と同様、災害対策本部から保健所に報告し、その指示を受ける。養護教諭等を中心に健康観察を行い、患者の早期発見、医療機関への連絡または移送、消毒等の支援に当たる。

A51 トラブルが発生した場合は避難住民の自治組織に連絡し、その解決を求める。震災直後はとりあえず助かったことへの安堵感が強いが、状況が明らかになるにつれて怒り、不安感や焦燥感、プライベートの制限によるストレス等が蓄積し、トラブルが発生しやすくなる。そのため、避難住民が語り合える場を設けたり、健康体操、レクレーションを実施するなど、気分転換を図ることが重要である。

A52 災害対策本部から各避難所へ生活情報を発信する。阪神・淡路大震災以後、災害対応総合情報ネットワークやインターネットを活用した情報交流組織を構築しようとしている自治体も見受けられる。

A53 災害対策本部に報告するとともに医療機関に連絡し、その指示を受ける。また、他の住民には発病による動揺を抑え、平静を保つように指導する。

A54 パソコン(エクセルロータスなどのシステム)を使って名簿を作成するのが望ましい。その際必要な項目は、整理番号(家族ごとに番号をつける 001-1 001は整理番号、1は家族内番号)、氏名(よみがな)、年齢(学生の場合は在学校名も記入するとよい)、性別、住所、電話番号、避難場所、身体状況(病弱・肢体不自由等)、入所月日、退所月日、退所後の行き先及び電話番号等である。緊急な場合を予想して、名簿用紙を作成しておく。

A55 ペットの種類にもよるが、基本的にはペットと人を分けて収容する。それが不可能なら、ペットの愛好者の部屋とそうでない人たちの部屋を分けたり、体育館などでは部分的に分けることも考えられる。しかし、愛好者は家族同様だと考えるし、きらいな者は近寄るのもきらいといい、建物が同一の場合はトラブルが発生しやすい。要請に応えるには、学校のみの対応では限界があることから、災害対策本部に相談し、指示を受ける。動物愛護、動物福祉に理解を示す民間団体に協力を依頼することも一つの方法である。

A56 災害対策本部に報告し、その指示を受ける。行政サイドで遺体・遺骨の仮保管方法(保管場所、柩、ドライアイスの入手先)を事前に確立しておくとともに、隣接県・市・町と相互救援体制を結び、緊急時の対応をスムーズに進める手だてが必要である。

A57 余裕がある場合は、家族だけの方が良いが、そうでない場合はできるだけ小さい子どものいない家族と静かな教室に同居してもらう。1階でトイレに近く、本部と連絡しやすい教室が良く、できるなら騒音が少ないところにする。かかりつけの医者(病院)、薬等を聞き、緊急時いつでも往診や薬の手配ができるようにしておく。また、巡回の医師・看護士で間に合わない時のために救急病院・保健所などに連絡をとり、手配できるように準備しておく。食事等については、要望を聞き、できる範囲で介助をするようにする。看護士や保健婦等の専門家がいれば、介助や指導の協力を要請する。

A58 「自主防災組織」がなく、大災害で避難生活が長期にわたる場合は、当該自治体からずっと避難所の世話をすることが困難なので、避難住民の組織化を図り、食事や生活物資の配給、衛生面の保持など自主運営を図る必要がある。そのためには、避難住民を30人前後をブロックとした班長やリーダーを選ぶ。避難してきた当日は、災害のショックや不安感から放心状態が考えられるので、心の落ち着きを取り戻すまでしばらくの間(2~3日)待って、避難住民の状況把握につとめる。その後自主運営のための組織化を説明し、自主的に班長などリーダーを決めてもらう。決まらない場合は、リーダーになってくれそうな人に直接お願いする方法も考えなければならない。

 班長会議、リーダー会議は夜の時間帯で、会議資料も用意して行うのが良い。避難所全体が家族として運営できるように一人一人が役割分担に心がけ、リーダーが自立していっても、みんなが助け合って生活できるような組織運営に心がける。こうした時のことを考え、日頃からの訓練が大切である。

A59 被災に加えて、避難所という生活環境の変化による心身の疲労やストレス、不規則な生活等によって睡眠障害、急性ストレス反応、PTSD等が現れる。保健所と災害対策本部が、巡回相談や心の救護所の常設などによってケア活動が行われる。教職員がその活動に関わる場合は、精神科医、保健婦、精神保健福祉相談員、臨床心理士らのチームに加わりその支援にあたる。また、児童生徒の中には長期的なケアが必要な場合があり、スクールカウンセラーや心のケアセンター、保護者と連携した継続的な活動が望まれる。

A60 原則として禁止であるので、暖房用のストーブも最小限に止め、(1室に1台)常時使用しないようにする。電気ポットなども原則として禁止の措置をとる。多数使用すると、ブレーカーが落ちる。決められた場所(例えば家庭科室や校舎外)にガスコンロ等を準備する。

A61 今回の震災では、災害時のボランティアのコーディネートについて、平時からの体制づくりが大切であるとされた。特に、専門ボランティアの迅速な応援体制が重要であり、県では救急・救助、医療、介護、建物判定、手話通訳、ボランティア・コーディネータ、輸送の専門ボランティアを予め登録し、必要に応じ被災地に派遣することとしている。一般ボランティアについては、避難所、仮設住宅、一般家庭で長期にわたり活動できるようにボランティア活動支援センターを市町の災害対策本部に設置し、専門のコーディネータを配置して活動を展開する。また、民生委員や福祉委員、地域の各種団体の活動も、被災直後から地域のコミュニティづくりには欠かせないものであり、これらの組織とボランティア、行政、関係団体とのネットワークシステム化が必要である。

A62 原則として乗り入れは禁止する。グラウンドをテント村や乗用車の駐車場に開放することは好ましいことではないが救急車両、物資保管区域、ゴミ処理区域のスペースを除き、全体にスペースがある場合、それぞれの区域を指定し、その範囲内で使用を許可する。防災計画の中に避難住民を受け入れる時、体育館等の開放とともに、グラウンドの開放も想定し、区域割りをしておくことも大切である。車を所持している避難者を明確にし、それぞれのナンバーを把握して、所有者を明らかにしておく必要がある。緊急自動車・救援物資搬入用の通路は必ず確保する。また、グラウンドでのプレハブ等の建築物使用はしないことも大切である。

※避難所を閉鎖するにあたって、所有者のわからない車が放置されていたため、警察に照会した後移動した。大変日数がかかった。

A63 入所の場合は、あらかじめ決めておいた様式の入所者カードに記入してもらう。ただし、緊急の場合は臨機応変に対応する。退所の場合も同様に行う。避難所の自主運営組織ができあがった段階で、各部屋の班長を通して本部に報告する。

※阪神・淡路大震災の学校施設への避難住民状況

 県立学校   11箇所  10,454人

 市町立学校 371箇所 170,608人

 合計    382箇所 181,062人 ピーク時は平成7年1月23日

A64 窓口を1つにし、数量や日程を調整して、可能な限り、受け入れるようにする。震災直後から学校現場には、近くの自治体・宗教団体・市内の被害のない学校のPTA・企業から炊き出しの申し出が数多くある。そのような場合には、学校独自で受け入れるかどうかの判断をせず避難住民のリーダー等と相談して、善意を受け入れる必要がある。交通機関の復旧に伴い、多くの申し出があると思われるが、避難住民の需要以上の場合もあり、苦慮することがあると思われる。学校現場ではボランティア活動として受け入れるが、教職員の支援が必要となり、本来的業務ができにくい場合も生じるので対応は慎重にする必要がある。

A65 原則として断る。本人が避難していてしかもスペースがある場合は、学校が再開しても支障のない範囲で、本人の避難場所近くで本人が保管する。しかし、退所の時に引き取ることを確約させることが大切である。また、本人が退所する場合には、いかなる理由があろうとも断ることが大切である。

※避難場所に荷物を置いたまま退所し、後日紛失物があると責任を学校、市当局に求めたケースが数件あった。避難住民が0になった後も校内に放置自転車60数台、放置単車20数台、放置乗用車1台、その他洗濯機、冷蔵庫等多数あり、処分に困った。

A66 障害者がパニック状態に陥らぬためにも、別室が望ましい。障害の種別によって、その対応が異なるので、なるべく日頃障害者に接する経験を持った(施設の指導員や、福祉関係者等)が対応する方がよい。

A67 災害対策本部やボランティア本部に連絡して専門職の派遣を依頼し、その指示を受ける。事前に保健室や救護所の近くに収容場所を確保しておくことが大切である。行くところがない場合は、とりあえず引き受けるが、一般の人とは別の部屋に収容し、必ず家族と同居してもらう。生命に係わる危険があるので、できるだけ医療機関へいくように助言する。

A68 学校の備品の場合は、教育委員会と連絡をとり指示を受ける。また、災害対策本部、自治組織に対応を依頼する。外部からの可能性がある場合は、災害対策本部、警察署に通報するとともに、自治組織、ボランティア本部に呼びかけ、自主パトロール隊の組織化を図る。

A69 学校の備品は、児童生徒の教育活動のための者であることを説明し、原則としてすぐに元の場所に返却するように依頼する。万一、病人やけが人等の救助のためであれば、十分話し合ったうえで許可する。ただし、無断で使用したことはルール違反していたことを押さえる。

A70 保健所が薬剤師会などの関係団体と連携して、保管、管理する。保健所は、被害状況や市町の要請に応じられるよう供給体制を確立しておくことが大切である。教職員の支援が必要とされる場合は、養護教諭を中心に、要望の整理や配布の手伝い程度になると思われる。

A71 災害対策本部が備蓄倉庫を管理しているのが通例である。(救援物資を提供する場合には、事前に必要な物資を問い合わせたり、種類毎に箱に詰め、表には物資名の貼り紙をするとよい)災害対策本部を通さず直接市町や学校に他府県から送られてきた物資は、市町によっては物資をまとめて一つの体育館等に保管し、必要に応じて配給することも考えられる。また、各学校においては避難所の近くの倉庫・空き教室等カギのかかる場所に保管するように計画することが望ましい。

A72 混乱の生じない場所、搬出入に都合のよい場所を設定し不平等が生じないように配慮する。また、受け渡しの場所、時間、物品、数量等は事前に掲示板等で知らせておき、混乱のないようにすることが重要である。医療・医薬品については専門ボランティア、保健所職員等が巡回相談や救護センター等で配布する。

A73 避難住民はいろいろな心配や不安を持っている。従って、出来る限り情報を流して心配や不安を解消するようにしなくてはならない。震災情報をコピーして避難住民に流したり、掲示板を作って毎日のニュースや連絡事項を記入したりする必要がある。

A74 飲酒は避難所内では禁止する。災害対策本部、避難所の自治組織、学校の管理職、ボランティア代表の4者で、共同生活する上で必要なことがらについて、ルール作りを行うが避難住民の自立を救助するためのルールであり、自治組織の活動を制限するものであってはならない。

※やりきれなさを酒で紛らわそうとして、避難所へ酒を持ち込んだ人がいた。やがて、学校の職員に酒をすすめたので、校長が傍に寄り添い話を聞いてやることにより避難者のここを和ませることができた。

A75 学校は何よりも児童生徒の教育活動の場であることを念頭において、住民代表者にその理解と協力を依頼する。

A76 原則として断る。使用不能な教員でも、一定のルールに従って廃棄したうえでないと、自由にできないことを説明し、納得してもらう。避難住民は「我々の生活とどちらが大事だ」と強く求める場合もあるが、児童生徒の学習に必需品であり、自治組織や災害対策本部と相談してできるだけ火気を使用しないことを原則に、暖房の調整、毛布等の追加配給を検討する。

A77 避難住民の代表者に、避難所としてのルールの徹底を依頼する。どうしてもルールを守らない人には、避難所から出て行ってもらうことも検討する。

A78 明るくする時と、暗くする時の時間帯を決めておく。夜は「休む」ことを視点にし、弱者の意見を聞いたうえで時間設定する。ただし、万一に備えて、真っ暗にはしない。明るいと眠れない人にはアイマスクを配るのも一つの方法である。

A79 原則としてはイヤホンを使用する。複数でテレビを見たりラジオを聞いたりする場合は、他の迷惑にならないように配慮する。多くの避難住民が共同生活しているということを念頭においたるーる作りをすることが求められる。

A80 許容量を前もって避難住民に知らせておく。暖房器具等の使用で許容量を越える場合は、自治組織とともに節電の指導を行う。また、電力会社に電源の増設、電力の増量等を災害対策本部を通して依頼する。

A81 肉親の死や家屋の倒壊など、喪失感が大きければ大きいほど生きる勇気が萎えてしまうものである。自分だけ無事でいられることへのうしろめたさや対応が誤っていたという自責の念から無力感や絶望感に陥ることが多い。相手の気持ちを受け入れ、話しやすい雰囲気をつくることに心掛けることが大切である。その際、留意しておくこととして、次のようなことが挙げられる。①相手の意欲のなさを非難したり、過度な励ましはしない。②相手に対してこう考えるべきだという原則論を押しつけない。

A82 災害対策本部やボランティア本部に連絡して専門ボランティアの派遣を依頼し、意思疎通の円滑化を図るとともに、被災に対する意識、生活習慣等の違いによりトラブルが生じないよう、外国人、地域住民双方の理解促進に努める。

A83 学校が避難所として使用される場合、行政(市・区)と学校との役割分担を明確にしておく必要がある。学校は、校舎・施設の管理運営を責任もって行い、その他の避難住民に関する業務は行政が中心になって行う。教職員の日直や宿直の割り振りについては、最小限に止めるとともに、特定の人に負担が集中しないように十分配慮する必要がある。

A84 ①臨時休校の措置 混乱の中、最初に出勤してきた数人の教職員によって校門前や校区内数カ所に臨時休校する旨の掲示をする。②教職員の被災状況の把握と連絡③児童生徒の安否確認と被災家庭の実態と把握④地域の被害状況の把握や通学路の安全確認、危険箇所のチェック④市町災害対策担当部局や地域の自主防災組織の責任者を交えての打ち合わせと本部の設置。⑤校舎内外、教室などの整備確保と備品や教材の移動⑥避難所の設置と避難住民の誘導⑦避難住民や外来者への対応

A85 地域における震災の程度によって、連絡の方法は異なる。程度の軽い場合は、従来の連絡方法(連絡網による電話連絡等)で良い。かなりの災害を被った場合は、校区内に在住している児童に対しては、家庭訪問をして保護者や本人に伝える。また、居住区域外に移動した児童に対しては、可能な限り再開する旨を伝える。基本的には、再開日時や集合場所を記入したポスターをベニヤ板に貼り、校門に掲示する。同時に、校区内の目に付きやすい所にポスターを貼りつけたり、掲示したりする。

A86 学校と避難所の自主運営組織とで常時情報交換を行い、学校教育との共存のための生活ルールを取り決めていき、避難所運営の円滑化を図る。学校施設を使用する場所、時間帯、活動内容生活ルールなど状況を見ながら決めていく。また、学校として解放できる施設、開放順序は前もって決めておき、日頃から地域の人々に周知徹底を図っておくことが大切である。

A87 学校を再開するためには、教室に避難している人に移動してもらわなければならないことがある。震災直後の時は比較的スムーズに移動してもらえる。しかし、日数が経つにつれ移動は困難になる。新しい人間関係を作るのが難しくなるのである。また、身体的理由(いびきが大きい、喘息がでる、トイレが近い等)で移動を渋る場合がある。学校としては、強制的に移動できないので、自主防災組織の責任者を通して説得してもらうとともに、仮設住宅の斡旋についてもお願いする。

A88 災害により教科書が紛失またはき損した場合における教科書の供給等について(通知)(昭和52年4月8日付け文部省初等中等教育局長通知)により、下記の方法で調査、補給を行う。①災害のため補給を要する教科書の調査および補給の方法②災害救助法に基づく教科書の給与③関連機関との連絡等 文房具に関しては、救援物資が全国から一斉に大量に送られてくるので、量的には問題ないが配布方法、使用方法については注意が必要である。災害直後は、すぐに調達しようとしても状況が難しい。紛失した児童生徒に紛失していない子が見せてあげたり、教師がプリントにコピーしたりして急場を凌ぎながら、取り寄せる手続きをとる。上級生が自宅に残している分を借りたりして紛失児童生徒に教科書が行き渡るまで、心理的な負担をかけないように配慮する必要がある。

A89 被災地の学校では、水道・ガスの復旧ができないため、簡易給食で再開する。また、自校調理できない学校は、共同調理場や近隣校で調理し、配送する代替方式でたいおうする。保冷庫の点検と物資置き場の確保に力を入れるとともに、給食室の清掃や消毒を徹底し、水の汚染が危惧されるため、入水槽・高架水槽の水質検査を実施する。地域が被災した場合、適正な栄養の確保が困難になるため、学校給食の早い再開が望まれる。給食センターやライフライン、食材、交通等の状況を考えながら、教育委員会を中心に給食センター、学校、保健所等が協議して手順、日程などを決定する。

A90 災害によって発生する睡眠障害、急性ストレス、PTSD負傷に伴う精神障害等がある。しかし、状況が明らかになるにつれて、将来に対する不安感、焦燥感、家族や住宅を失った喪失感、避難所におけるプライベートの制限によるストレスの蓄積などにより無気力感に陥ることがある。特に、児童生徒は精神機能が未発達のため、環境の変化の影響を受けやすく、退行現象や心理的反応、情緒的・行動的反応など、様々な症状を引き起こし、時には長期的に問題を持つこともある。

A91 速やかに個人あるいはグループによる体験の共有化、感情の安定と放出、心身緊張の解除を実施し、教職員間の人間関係を回復するとともに、当人及び家族の精神的健康の障害を最小限にとどめる。場合によっては、専門職による支援活動を依頼する。

A92 保護者に精神的不安定さが見られる場合は、子どもたちへの影響が予想されるため、福祉・民生委員や生活支援アドバイザーなどに相談し、専門的な対応を急ぐ。

A93 教師は職業上のストレスに慢性的にさらされている結果、他の職業と比べ日頃から「燃えつき症候群」に陥りやすい職業とされる。従って救援活動中は、次の点に留意することが大切である。①必ず時間を決めて休息を取る。決まった時間で交代する。②一日の活動の終わりや活動の節目に、活動の内容と自分の体験や感じたことを仲間と話し合い、共有しておく。③疲弊しきった場合には一時活動を中止する。

A94 全体に話す時も、一人一人の子供たちの被災の程度、感受性に違いがあることに十分配慮した上での指導となるよう心掛けるとともに、必要であれば保護者を含め、心のケアに努めることが大切である。場合によっては関係機関や専門家を紹介し、指導を受けさせる。対応のポイントとしては、①子どもが甘えてきたときは、突き放さないで受け入れてやる。②子どもを一人だけにしないで、安心できる大人がいつも側にいるようにする。③大人の方から、むしろ積極的に、身体接触をするように心掛ける。④子どもに優しく話しかけたりして、不安や恐怖を和らげるようにする。

A95 ①子どもの話によく耳を傾ける。②決して「がんばれ」などと激励しない。③いらいらしたり、腹が立つといった気持ちを叱らない。④できれば、手伝いなどをさせて、できたことを褒めて自身を持たせる。⑤自分を責めないように、だれでも同じだということを話して聞かせる。⑥「甘えていいのよ」と言って、安心して甘えられるような雰囲気をつくる。⑦子どもの持っている気持ちを、共有(共感)するように努める。

A96 中学生になると、震災によって生じた不安や緊張が、心理的な葛藤を引き起こし、日頃の行動パターンがしばしば変わることがある。しかし、小学生のような単純な退行現象を示すこともよく見られる。対応のポイントは次のような点である。①状況に対する理解力もできているので、よく話を聞いた上で「~したらどうか」といったように具体的な指示を与えるが、決して強制はしない。②本人の要求は、平常心に戻るまでは、できるだけ受け入れる。③同じ症状を繰り返す場合は、そのこと自体を責めないで「大丈夫だ」と保証してやり、安心させる。

A97 高校生になると、「家や家族に被害がなかったこと」「他人のために何もできなかったこと」などから自分を責めるといった気持ちを持つことが多い。また、将来の人生設計を組み立てている年頃でもあり、震災により、将来の人生設計がすべて崩れたように思い込んで、絶望感に陥ることがある。その結果、自分の殻の中に閉じこもって、友達や社会から引きこもり、孤立してしまう。また、アルコールや薬物へ逃避したり、非行などの反社会的な行動へ走る結果になることがある。対応のポイントは次のようなことである。①いろいろ問いかけるのではなく、生徒から話し出せる雰囲気を作って、ゆっくり聞いてやる。子どもには、話をし話を聴いてもらうことだけで自分の心の整理ができる力を持っている。②無理に作文などを書かせるのではなく、書きたいと思ったときに書かせ、本人が見せてくれるようであれば、よく読んで、本人の気持ちと共感しながら、将来に向けて明るい話をする。

A98 障害がある子どもたちの心の問題については、障害があるが故にショックを受けた後の問題行動が見えにくいことも考えられる。地震による家屋の倒壊や火災等で家に住めなくなり、避難所に移った障害児の家族からは、子どもが走りまわったり、夜寝なかったり、急に叫び声をあげたりするために避難所にいることが難しくなり、壊れかけの家で住まざるを得なかったという事例もあった。知的障害がある、目が見えない、耳が聞こえないなどのハンディキャップのある子どもには、自分を安心させるための情報も入りにくいので、ストレス反応の内容がふくらみやすかったり、別のストレス反応に変わりやすい。本人の訴えに耳を傾け、要求を受け入れることが大切で、教師や親は特に注意してその子どもの変化を読み取り、適切に対応することが大切である。

A99 先の大震災では、交通網が寸断され電話も通じない状況の中で、消防署などによる救急活動が困難をきわめた。このため、平素から日本赤十字や消防署が行う講習会に積極的に参加し基本的な応急手当てについて必要な知識を一人でも多くの人が身につけておくことが大切である。応急処置に当たっては、負傷者について、①大量出血はあるか。②意識ははっきりしているか③呼吸はしているか④脈はあるか⑤手足は動くか⑤顔色は正常か。などを観察しながら、緊急に何をすべきかを判断しながら処置することが重要である。しかし、最も大切なことは、自らが負傷した時も他の負傷者を発見した時も、周囲の人を大きな声で呼び、みんなで協力して救出や必要な応急手当てを行うとともに、一刻も早く医師や救急隊員に引きつぐことである。

 

あとがき

 本書の作成に当たりましては、学校関係者をはじめ、県や市町の防災関係部局、防災教育専門推進員などの方々から貴重なご意見をいただきました。それぞれの回答は、そうした意見も踏まえながら、大地震の提示した様々な課題についての一つの考え方を示したものです。具体的な対応や対策はその時々の学校や個々人のおかれた状況によって異なってくると思われますので、本書を参考にしながら臨機応変に対応していただくとともに、各種研修会やその他さまざまな機会に活用いただき、危機管理や防災意識の高揚に役立てていただけたら幸いです。